■YUKI von MURATA氏のイラン・アラビア半島湾岸諸国視察と戦争4

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4.戦争か回避か

4-1.イラン政府及びイラン外務省のイスラエルのイラン攻撃分析

予備知識:イスラムの情報メットワーク 
イスラエル及びユダヤのネットワーク、あるいは世界最大の情報機関・バチカン同様にイスラム(アラブ系・イラン=ペルシャ系、トルコ系など)のネットワークは世界では無視できない程、張り巡らされている。国(非イスラム世界の欧州、北米、南米など)によっては、イスラエルのネットワークとイスラムのネットワークがお互いに情報戦を争っているところもある。予備知識説明終り

ある時、イラン外務省及び各国に派遣されているイラン大使館職員と長年交流している某人物と深夜のテヘランを車で移動しながら話す機会があった。重要な情報を聞き出したいが、イラン人がこのセンシティブな情報を直球の質問では警戒されて語らないことは判っていたので、1時間以上に渡る雑談から、こちらが得たい情報を探るしかなかった。長い雑談と自然な流れから、やがてイスラエルのイラン攻撃の可能性についてお困りだと思うが、イラン政府やイラン外務省はどのように捉えているのか質問をした。以下、回答要約

1イラン政府あるいはイラン外務省は戦争になる可能性があると分析している。
2.最低でもイスラエルによって核開発関連施設が攻撃を受けると覚悟している。あるいは予測している。(注:イラン国内核関連施設所在地:ウラン濃縮施設 ナタンツ、ラシュカール・アバド、重水炉:アラク、重水製造工場:アラク、軽水炉:プシェール、エスファハーン:など)
3.ただし、1980年から1988年のようなイラン・イラク戦争のようにはいかない。今回ばかりはこのイスラエルがイランを攻撃する問題に慎重に対応しなければならない。
4.すなわち、イスラエル及びアメリカの挑発などに乗らないように慎重に対処しなければなららない。
5.イランは防衛の軍事力については自信があるよう思われる。航空機や最新の戦車などを例に挙げた。

分析:今年2012年の前半の3月頃までは、イスラエルによるイランの核開発技術者などの暗殺活動に対してのインド、タイなどで報復を持って過激に反応していたが、方針を変えたようだ。上記3で示唆するように、今度は(安易に戦争にならないように)慎重に動かなければならないということから、イラン自身は現在政治的に置かれた国際状況を十分理解している。対外的には面子を重んじているため強気の声明等はあるが、彼等自身はこの問題の舵取り次第によって引き起こされる影響を理解している。ゆえに、イランから挑発に乗って戦争する可能性は低いだろう。

事実、これを実証する情報がある。今日までイランはかなり慎重に外交交渉でも対応しており、水面下のイランとの繋が強い過激派グループ、テロ組織は挑発行動に出ないように控えて模様である。これら過激派またはテロ組織に対してイランにこの問題で直接敵対する国の組織=イランを攻撃したい国の組織(表面上はイランの敵対国とはわからないように偽装した組織)が、そそのかしてわざとイランを直接攻撃したい敵対国やその同盟国を攻撃するように工作をもちかけてもなかなか乗って来る気配がない或は苦慮しているなどの情報報告が事実ある。

こうなると偽の旗作戦(相手国の人間の振りして工作をする)しかないかもしれない。

5について、イランの防衛能力には疑問がある。イラン空軍の戦闘機はF4ファントムの旧世代が多く、他にF14トムキャット、MIG29。これらで制空権を死守するのは難儀だろう。ただし、イスラエルのイランへの電子妨害戦の能力及び作戦にもよるが、イスラエル空軍の数10%はイランの防衛攻撃を受け撃墜される可能性はある。ただし、これはイスラエル単独の攻撃の場合。アメリカ軍が参戦し巡航ミサイル等で標的を集中攻撃後に空軍で攻撃作戦ならば別である。

他方、第二次世界大戦の時と異なり、現代戦では戦車は制空権を失った下では、航空機からの攻撃によって(*)鉄の棺おけになる。むろん、イラン側もこのようなことは理解しているはずだ。隣国のイラクはイラク戦争においてアメリカ軍によって短期間で陥落したこともあるから。

(*:鉄の棺おけ・・・漫画家・松本零士氏の機械化されたドイツ戦車部隊の軍人にも夢や血の通った人の心を持った誇り高きドイツ軍の主人公の語る最後のシーンを連想します。ハリウッド映画には絶対出てこないドイツ兵のイメージです。現実はナチスのイデオロギーなど関係がない血の通った多くのドイツ人が兵士として戦場へ戦ったということです。イスラエルの兵士もイランの兵士も多くは同じです。他方、ハリウッド映画のドイツ人しか知らないアメリカ人中には日本=侍や忍者が今もいると信じているように、ドイツ人=凶悪、非情なナチスというイメージしかないので、恐がる教養の無い人がかなりいます。もっと面白いのはアジアでは龍が空を飛んでいると信じている大学出の人もいる。呆れることだがね。BBCが空飛ぶペンギンを作成したように、アメリカ向けにCGで作成した空飛ぶ龍のエープルフール・ニュースを流して欲しい。)

イランの戦力での脅威はミサイルによるアラビア半島の湾岸諸国(各国にアメリカ軍駐留基地あり)などに攻撃できる能力を持っていることだ。

私にはこの重要な情報を得ただけで十分目的を果たしたことに等しかった。後はイランの要所を視察することに決めた。話題が変わり、イランではアルコール飲料が戒律で飲めないことになっているが(注:ノンアルコールビールはイランの国産及びドイツ・オランダブランドなどがある。味は悪くない。経済制裁がなければ日本のビールメーカーも進出できるはず。)、実は闇で飲めるところがあると言う話題になった。「そこへ行ってみる?」と笑顔で相手に聞かれたが、そのような場所で警察に踏み込まれ、協力者にさせられるヘマはしたくなかったので、別にアルコール飲料は何ヶ月も飲めなくて平気だったので丁重に断った。

よく著者は文章の中でワインなど飲んでいる描写を記載していいます。アルコールには強いが、邸宅では滅多に飲まない。一人であるいは友人と外食の際に内心でミサのように感謝の気持ちを祈りながらグラス数杯飲む程度だ。但し、外国へ行った際は地元の様々なアルコール飲料を楽しみたいためによく飲む。別にアルコールがなくても困ることはない。タバコも不要だ。アルコールよりも食料が入らない僻地や食事をする時間がない場合などミルクか野菜ジュースの方が大事だ。それがあれば生命維持活動が保たれる。

その人物に握手しながら御礼を述べ、車を降り別れた。まだテヘラン市内の空は暗かった。近くのランドマークであるアーザーディータワーは輝いていた。

4-2鳩山元総理のイラン訪問(2012年4月6日〜日)における外交上の問題点
鳩山元総理の主旨である戦争阻止=平和は理解できる。(モサッド元長官などとこの点は利害が一致している。戦争によって利益を得る別の勢力の利害には反するが。)ただし、この場合イスラエル及びアメリカに対して日本の外交上の誤解が生じるような不整合があってはならない。問題は鳩山元総理がイランへ行く事が問題ではない。もし、これが問題とされるのであれば議員外交は行なってはいけないということになる。この問題はイランとの外交のやり取りにある。

本来このような元総理イラン訪問における外交目的に関連する内容が事前に漏洩することも問題であるが、ここではそれ以上は論じない。公表する場合は、下記で述べるが力点・・・「戦争が起こるとされるこの時期だからこそ、イランに国際原子力機関の視察に協力して、核兵器開発の疑惑を晴らし、原子力の平和利用に専念するように伝える。」ためにイランへ訪問すると公にしておくべきである。

さて、鳩山元総理はアフマディネジャド大統領との会談で「(前半)NPT(核拡散防止条約)が核保有保有国を対象とせず、非核保有国の平和利用を批難するのは公平でないとことを承知している。(後半)日本は疑念を払うためにIAEA(国際原子力機関)に協力し原子力の平和利用を進めてきた。」正論(NPT及びIAEAに対しては批判になる)であるが問題が生じる。

前半いついて、NPTの当初の核保有国は第二次世界大戦の戦勝国である。この彼等の独占、利益、ルール、計画、思惑等が反映されている不平等条約である。核保有国はこの核兵器等の破壊力は地球規模での損失を与える脅威し、それの拡散を防ぐために核兵器の保有を彼ら以外にはできないようにするとした条約でもある。

確かに、核保有国は例外とされることに、異論があるというのは正論でもある。本当はどこの国でも、核開発する権利は本来ある。同時に、核保有国の核兵器の破棄を促されるべきであるとする(理想論の)意見もあるが、この条約は(現実は)軍事力によって維持されている条約であり、核保有国の核放棄はその条約の実行力を失うことになる。すなわち、核兵器の世界への拡散につながる。残念ながら現代の地球上の社会では必要悪の条約でもある。

また、核関連及び核兵器は1940年代に開発された技術であり、現代では材料(ウランまたはプルトニューム等)と設備(原発と濃縮施設等)があれば大学生でも製造できるものである。キチガイに刃物と言う様に、核兵器は単なる刃物程度で無く、一発で数十万人を殺害できる兵器である。故に、これが世界にテロリストやならず者国家に拡散することは避けなければならない。

メディアによってはこの前半のみ伝える情報操作を行なっていた。元総理を支持あるいは擁護するつもりはないが、メディアとの態度は公正ではない。読者はメディアがかつての石原知事発言も(*)曲解するように、よくその情報を査定しなければならない。私は例え敵でも正論を主張している場合は認める。曲解して相手を貶めるのは私の美学に反する。

(*)藁人形作戦:メディアあるいは人が相手を攻撃する際、攻撃対象に議論等で反論するのでなく、攻撃相手のありもしない架空の人格や議論を打ち上げて攻撃することがある。同時に攻撃相手とその読者及び支持者を離反させようと目論むことが目的でもある。例:過去にクラインさんに対してありもしない事実無根の事柄を打ち上げて攻撃した者がいたように。この作戦は所詮、虚構という幻影によって支えられているため大概失敗する。
先の例もクラインさんによって撃沈された。藁人形を用いた者は信用を逆に失うことになった。読者はこのような情報の中にすり込まれている藁人形作戦を見分けかつ気をつけなければならない。世界の政治指導者に対しても、実はこの作戦が用いられている。このような相手と交渉あるいは分析する際は、この要因を排除し見極める能力を持つ必要がある。(藁人形の説明終り)

前半だけならば、元総理の発言はイラン側に誤解を与えるだけでなく、NPT側にも誤解を与える結果となる。裏を返せば、日本も核兵器保有する権利があるよ。とも受け取れる。その国策を日本政府も行なう意志決定、その覚悟をしているならばよいが(日本政府、佐藤内閣時代に核保有を検討したが断念。その後も核武装論は持ち上がる。著者は日本国民の議論と選択が必要だが、中禍人民共和国の軍事力増強は対日本侵攻計画が現実にある以上日本の核武装には反対しない。)そうでないならば、この発言は外交上及び国策上問題となる。また、NPTだけでなく、核開発を行なう国に対する制裁に反対であると受け取られる。イランはこの前文を強調した受け取り方をしている。あるいはイランの本音をこの元総理訪問で利用している。

イランの主張は、要約するとNPT(核拡散防止条約)は核保有保有国による不平等であるからそれに従わなければならないことに疑問がある。そのような制度のもとにあるIAEA(国際原子力機関)に協力することも疑問があるというのが本音である。この点についてイランが相手国に求める理解、同意あるいは期待である。(追:参照)

ここで、一般に人との会話でもよくある事だが、自分の主張が認められたとして、最後まで話を聞いていない者、聞かない者、失念する者、理解力あるいは読解力がない者、相手との一致した点を利用者、曲解する者などがいるように、外交でもこのような点が生じるのを可能な限り避けねければならない。

問題は鳩山元総理の後半の重要な発言・・・イランも国際社会のルールに沿った核エネルギーの平和利用をすべきだという重要な主旨をどれだけイラン政府に伝えられていたのかということである。これが正確にイラン政府に伝えられていない。伝わっていてもイラン政府に前文を強調され、国際社会は不公平であり、イランにも(査察など関係なく)核を利用する権利はあると逆に利用されるような結果となった。当初のイラン側の鳩山元総理訪問についてのイラン側の公式な発表(後に削除)から、イラン側には、核の利用に正当性を与えてくれるような印象を与えた(繰り返し得なるが、見解を変えれば利用された)と言える。この点が問題点である。残念なことだが、日本側はこのような外交上の見解の違いを最少限の押さえると同時に失態を防ぐための予防措置もとられていない。

元総理が日本帰国後捏造と相手国であるイランを批判する結果となった。本件に関して日本国外務省及び在イラン日本大使などもある程度関与(詳細はここでは述べない)していたにも関わらず、結果的には残念ながら外交上の失点とも言える。元総理にこの責任がある(押付ける)というよりも、むしろ最終的には野田内閣の外交能力がないことを露呈させた。同時に野田内閣に外交政策に重大な責任があると帰納できる。

追:一部の見解にイランの目的は日米関係あるいはイスラエルに対して楔を打ち込むことが目的とある。鳩山元総理の訪問はそれなりにイラン国内では歓迎と同時に利益とされることはある。が、鳩山元総理のイラン訪問が国際的に日米などの関係に楔を打ち込めるなどという効果(工作)ある或は期待はしていない。確かに、鳩山氏の訪問は西側諸国にある程度の影響はあたえているが、楔を打ち込めるような期待はしていない。イランはそこまで外交オンチではない。あるいは子供のような淡い期待を抱くような国家ではない。

4-3.イスラエルのイラン攻撃の大義名分、4-4オリンピックという宴と裏の動き、
4-5やはり開戦!開戦時期はいつか に続く。

YUKI von MURATA>>

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_21世紀を迎えた今世界は混沌としています。日本もその渦て
政治経済ともに、国際的視点に立脚し欧州からの情報収集が不可欠に
なってきています。欧州の国際情勢を日記風にまとめドイツ滞在歴
40余年の経験を生かし、現地よりレポートします。
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