■奥山篤信氏書評;クライン氏の論点はいつも日本の主体性なき国際舞台での幼稚性を指摘

◆目下欧州、とりわけユーロ圏ではギリシアのデフオルトでてんやわんや。
◆これではいかに我慢強いドイツ国民とて、黙っていない、メルケル窮地?
◆主人の趣味「ミニ鉄道」仲間の一人、物理学者に誘われ廃炉になる原発見学
◆一方日本ではこんな明るいニュースも!

■奥山篤信氏書評
◆脱原発を目指しながらも、均衡の取れた視点に着地しているので安堵
◆日本人の悪弊は何か事が起こると、熟慮をせずに付和雷同
◆政府基準が甘かったことがこの大惨事の原因
◆ジプシーの如く国家観無き日本人を反面教師としドゴール以来仏は反米自主独立路線
◆アメリカのお友達作戦の裏に何が隠されているか、

◆目下欧州、とりわけユーロ圏ではギリシアのデフオルメでいかに対処寸べきか、
頭を悩ませている。
もっとも安易な解決法は、ギリシャにさっさとユーロ圏から抜けてもらうことなのだが、
ギリシャはそれはしたくないらしい。
そらそうだ。ギリシャ経済が破綻とわかっていても、ユーロ圏野仲間に入っている分には
文句を言いつつ、仲間が助けてくれることを知っているからだ。
一方、助ける側に立てばたまったものではない。
まるで、ざるに水を流すようなもので効き目がない。
何しろその最大の犠牲国はドイツ。モロにとばっちりを受けて払え払えと周辺国から
責められているのがドイツなのだから

EU創設の目的は、欧州人同士で牙をむき出し戦った第一、第二世界大戦の教訓にある。
これ以上、欧州大陸を戦場にして、欧州人同士、戦うのはやめようというのだ。
そこで当時犬猿の仲にあった独仏=アデナウアーとドゴールの「仕方がない和」によって
スタートしたものだった。
創設当初はベネルックス3国と独仏伊6カ国だったのが今やEU加盟国27カ国。。
うちユーロ加盟国は17カ国と大世帯。
ユーロ圏の主導国は独仏だが、こうした倒産国の救済にあたるとなると、どうしても
金持ちと見られているドイツにその負担の多くをはおしつけられてしまう。
回復の見込みがあるなら、ドイツ国民もしぶしぶながら、ギリシャに手を差し伸べたいと
思う。
ところが現実は、そうではないから、困る。
貸しても効果がないとその結論はすでに出ていいるからだ。
◆これでは、いかに我慢強いドイツ国民とて、黙ってはいない。
というわけで、メルケル政権、このところ、窮地に追い込まれている。
メルケルCDUが組んでいる連立相手FDP(この党もスキャンダルまみれで、いまや党消滅
一歩手前という危機にある)が、つい最近、もうごめん!とメルケルの
ギリシャ支援志向にノーを突きつけたからだ。
もちろん、ドイツ国民だって、そりゃあ、これが限界ばかり怒りまくっていますしね。

ギリシャ、難関続く 欧州債務危機重大局面
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110919/erp11091920380005-n1.htm

しかしそんな中でもこと原発に関してはドイツの『脱原発』に変わりはないようです。
先日、
◆主人の趣味「ミニ鉄道」仲間の一人、物理学者に誘われ廃炉になる原発を
見学してきました。
原子炉のほぼ内部近くまで立ち入りましたが、その「安全対策」の完璧さに舌を巻きました。
案内してくれた技師の話ですと、ドイツの原子炉においての最重点は「一に安全、二に安全
三も安全」で、そのコストたるや莫大なものだと・・・
それなのにあの福島第一原発事故の不手際で、ドイツの原発開発までとばっちりを受け、
いまやこの原発では1000人が失業の憂き目にあっているということでした。
主人の友人によりますと、「ドイツの原発技術者は優秀だから、他国の原発ブームで
引く手あまた、当面、心配することはないが、その他の事務員などはどうなるのかなあ」
って。
そういえば昨日日本でもこんなニュースが報じられていました。
独シーメンスが原発事業から撤退、露ロスアトムとの合弁計画も解消
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23244320110919
◆一方日本ではこんな明るいニュースもあります。。
ピンチはチャンスとはこのことを言うのでしょうね。
世界初の「完全」人工光合成に成功 豊田中央研究所
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110920/trd11092018350010-n1.htm

さても甦れ、美しい日本より
http://melma.com/backnumber_133212_5292638/
◎ 奥山篤信 書評 
クライン孝子著 「[なぜドイツは脱原発、世界は増原発なのか。迷走する日本の原発の謎]
海竜社 1300円+税

<<ドイツの盟友クライン孝子氏の著書を早速一気に読ませていただいた。
実は僕はこの本を読む前にクライン氏が反原発へと驀進されたのか一抹の不安を持って
読み始めたのである。
ドイツ事情に精通され、メルケル首相に心酔しているクライン氏のことだからひょっとして
と思った次第である。
しかし
◆クライン氏は脱原発を目指しながらも、均衡の取れた視点に着地されているので安堵した。

僕の尊敬してやまない西部邁氏が最近嘆いておられるのは、
最近保守陣営で反原発に敵前逃亡のごとく駆け出した論者が多く居ることに、
僕も危機感を持っている。

吉本隆明氏のような、市民運動家が反原発に警鐘を与えているのは意外だが、
吉本氏が「科学に後戻りはない」と「原発をやめるという選択は考えられない。」と言っている。
ただ吉本氏の場合は、この場合文明論や哲学よりの意味合いではなく、
単に市民の物質的生活レベルを低下させないための議論であって、そこにはあくまでも
<市民性>が見え隠れする。

◆日本人の悪弊は何か事が起こると、熟慮をせずに付和雷同して、
まるで紋切り型の中学教師が生徒に教えるような単細胞の感情で押し流されてしまう。
政治家、マスコミ、評論家などがバカの一つ覚えの如く<一億総反原発>の流れ乗ろうとしている
状況はまさに日本人総白痴の現象といえる。

日本の原発技術は世界に誇る技術であり、この知的資産の輸出はある意味で日本の生きる道である。
また炭素資源を持たない日本にとって今後の経済成長に原発は欠くべからざる安価なエネルギー源
でもある。
さらに原発を持たずして核戦力の開発は不可能である。
原発技術と核戦力技術とは表裏一体であるはずだ。日本を真の独立国家とするためには核武装
しかないことを、僕たちは改めて認識せねばならない。

吐き気を催すのは相も変わらず日本国民のリンチのような東電いじめも実に見苦しい。
東電の設計基準は政府が与えた与件を条件として設計されているわけであり、
むしろ
◆政府基準が甘かったことがこの大惨事の原因である。
記憶が正しければ確か日立経営陣はそのメカニックの瑕疵を突かれて、堂々と自分達は東電から
与えられた仕様に基づき設計しプラントを製造したと述べ、さらなる感情論を排除した。
株主としてはまさに見事な対応であった。
それに比して東電の曖昧模糊の対応はまさに株主の利益をことごとく踏みにじるものであった。

クライン氏はこの著書のなかで、
日本の原発の導入の歴史やそこに見え隠れするアメリカの日本従属化の謀略を描きながら、
ドイツとして脱原発に走らざるを得ない経緯を詳細に説明されている。

僕とクライン氏といつも対立するのはフランス国の評価である。
これは個人の趣味もあるが、この本でもクライン氏はかなり批判的でフランス(+サルコジ)
の姑息な陰謀と政策を描いておられる。
僕は逆にフランスのその阿漕さには、まずフランス国の名誉と栄光が必ず存在するわけであり、
あっぱれと思う次第で、
クライン氏も描かれている去勢された主権無き、国家への忠誠心や誇り無き、
◆ジプシーの如く国家観の無き日本人が反面教師として取り入れなければならないのがドゴール以来
のフランスの反米自主独立路線と考えている。

サルコジ大統領とグルになってアレバ社が日本にやってきた。
フランス側から提示されている処理費用はとんでもない金額であり
なんと汚染水処理に1m2あたり21万円(合計531億円)もかかるという。
菅元総理は彼らに臆面も無く土下座して、値段も聞かずに発注する狼狽ぶりであったそうだ
フランスはクライン氏が指摘するように阿漕だが、
これに騙される日本の方が余程国民不在の政治を行なっているということであり万事が万事これである。

さらに
◆アメリカのお友達作戦の裏に何が隠されているか、
能天気に妾が旦那にすがるようにアメリカはやはり頼りになると思ってしまうお人よしの
日本人には驚いてしまう。

クライン氏の論点はいつもこの日本の主体性なき国際舞台での幼稚性を指摘し、
諸外国そして列強は自分の国のことしか考えていないことを、日本国民に自覚させしっかりせいと、
ドイツから発信されている。
こんなクライン氏を、単に奇麗事だけで平和や国際協調などとのたまう胸糞悪い
政治屋や守銭奴売国財界や官僚を日頃叩いている僕にとっては、かけがえのない盟友である。
今後もドイツより大いに叫んでもらいたい、そして健康に注意し長生きしてもらいたいものだ。>>