■Yuki von Murata 氏からのシリア問題分析レポート その4)

14.シリア軍の防衛能力

シリア・アサド軍の軍事力は、イラク戦争のイラク軍、リビア軍の
ような装備とは異なる。
シリア軍を侮るべきではない。それに、シリア軍の背後には、
イラン軍、ロシア軍が控えている。戦争空間は単なるシリアだけの
地理上の戦場空間だけでない。イラン、ロシアを含んだ地域が
戦争空間とする認識でなければならない。

化学兵器はドイツ情報局・BNDによると700tのサリンガス、
残りはマスタードガス、VXガスを保有。
(現在ロシア・プーチン大統領の提案で国際管理の元破棄を欧米側に打診。
シリア・アサド政権了承)

次に、ロシアはシリア・アサド政権に最新鋭兵器P-800Yakhonヤホント
対艦ミサイル、ロケットランチャーTOS-1A 24連装、対空ミサイルS300SAM、
(今後S400、スキーン5のミサイルの売却予定)を売却している。

このシリア軍配備の最新鋭のロシア製P-800ヤホント対艦ミサイルは
東地中海からトマホークミサイルを発射するNATO軍、
アメリカ海軍艦隊攻撃用に用いられる。高性能爆薬・装甲貫通弾頭を
備えている。同ミサイルは長距離レーダー誘導及びミサイル本体の
レーダーによって標的の艦に達するように飛行する。
射程距離は180マイル(290km)これは、イスラエル全土、トルコ、
キプロス空軍基地まで射程。東地中海で展開中のNATO軍、アメリカ、
イギリス、フランス、ドイツ海軍(情報収集)が射程に入る。

対空ミサイルS300SAMは地上配備されたイスラエル軍パトリオット
ミサイル迎撃用できる。

従って、アメリカ軍、軍事アナリストの意見は多大なアメリカ軍の
犠牲が生じる可能性が高いという見解が多い。 これらの事から、
アメリカ軍はシリア軍への攻撃計画について見直しを行う必要性が生じた。
アメリカ軍は対シリア軍に対するアメリカ空軍、海軍の攻撃力を増やす
こと要望している。この動きに対してさらにロシア軍がシリア軍への防衛
に力を注いでいる。この段階まで進むと、もはやシリアでの限定戦争は
できなくなったということを意味する。

開戦となれば、イスラエル全土が標的となり多大な被害が生じる。
このような状態(シリア軍がイスラエルへ攻撃限界点を超えると)
ではイスラエルが単独の決断で本土防衛目的にシリアへの核兵器を
使用する可能性も出てくる。

15.国連調査報告
国連調査報告は、シリアで化学兵器・サリンが使用された。但し、
そのサリンを誰が使用したのか(シリア・アサド政権側、
反政府軍のどちらなのかは断定できる証拠はない)とする報告をした。

上記13章と基本的に問題点が重なる為、ここでは詳細に説明しない。

注意点:残念ながら、国連報告書に明確な証拠がない為、
それを受けた各国の主張、主観、利益誘導が支配する状況である。
同様に各種メディアの利益にそった主張に誘導されやすい欠点が生じる。

従って、国連報告書原本を読むのには問題ないが(全く問題がない訳
ではない。過去にも様々な国の政府機関から調査団職員に対する圧力がある)、
各国政府、メディア経由のニュース概要の場合は各国のフィルターが
入っているのでその点を組んで読む必要がある。
例えば、アメリカ合衆国の首都のワシントン・ポスト紙は、
この報告書をシリア犯行に違いないとする他の情報を加える自説を
世論に働きかける報道をしている。国連報告書はそのような事は
一切書かれていないが。